物流業務(発送業務)を効率化するためのポイントは?効率化事例4選も紹介

物流業界は慢性的な人手不足や業務量の増加で、すでに業務過多の状態になっているのではないでしょうか。そのうえ、2024年4月より時間外労働時間の上限規制がドライバーにも適用され、年960時間となったことによりさまざまな問題が発生するとされる「2024年問題」の影響も懸念されます。

このような状況下において、物流業務の効率化が急がれます。物流業務の効率化にはいくつもの方法がありますが、業務のデジタル化(デジタライゼーション)もそのひとつです。

ここでは物流業務の現状と課題を抑え、物流業務のなかでも特に効率化と正確性の両立が求められる「発送業務」に絞り、正確性を維持して効率化する方法や物流センターにおける事例などを紹介します。

物流業務の現状と課題

物流業務の現状と課題を解説します。

物流業務の現状

現在の物流業務には、次のような傾向があります。

  • 配送量の増加
    配送される荷物が大幅に増加しています。主な理由は次の3つです。
    ●小口配送の増加
    ●フリマアプリの発達
    ●コロナ禍による外出自粛の影響と、その習慣化による通販の利用激増

  • 荷物の小口化
    ECサイトやフリマアプリの荷物が増え、個人宛ての荷物、つまり小口の荷物が多くなっています。企業間取引(BtoB)においても、サブスクリプション型取引や業務用ECサイトによる購買などが増えており、結果として荷物の小口化が進んでいます。

このような状況なども影響し、物流業務には次のように多くの課題があります。

物流業務における課題

物流業務には次のような課題があります。これらは、報道などでもたびたび話題になっています。

  • 長時間労働
    慢性的な人材不足によって1人当たりの業務量が多くなり、労働時間が延びています。
    また、ドライバーの業務は運送だけではなく、荷物の積み下ろしや待機なども加わるため、拘束時間も長くならざるを得ません。その結果、長時間労働が常態化しています。

  • 労働環境の悪化
    個人宛ての荷物では時間指定や再配達など余分な業務が生じることも多く、効率的な配送ルートが組めないこともあります。また、ECサイトでは当日配送、翌日配送などのサービスを提供しているところも見られます。そのため配送のスピードアップを求められ、それが大きな負担となることも少なくありません。
    加えて、業務負担に見合う収入とは言えないことも、大きな問題です。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、トラックドライバーの年収が、全産業の平均よりも5~10%程度低い結果となっています。
    以上のようなことから、ドライバーの労働環境は悪化していると言わざるを得ません。

  • 人材不足
    少子高齢化により、ドライバーを中心に働き手の高齢化が進んでいます。また、労働環境の悪化によって、新たな担い手が増えづらい状況にあります。

  • 2024年問題への対応
    働き方改革関連法による時間外労働上限規制の猶予期間が終了し、2024年4月1日よりドライバーにも適用されるようになりました。その結果、何も対策を講じなければ配送できる荷物量が少なくなり、これまでと同等のサービスの提供ができなくなってしまいます。十分な対策ができていないところは、早急に対応しなければなりません。
    2024年問題について詳しくは、「物流クライシスとは?物流DXで2024年問題から脱却するには」をご覧ください。

  • コスト増大
    国際情勢により、ガソリン代の高騰が続いています。
    また、企業・業界を問わず、賃金の引き上げを求める動きも進んでおり、人件費も上昇傾向です。
    さらに、法定割増賃金率の引き上げの適用が猶予されていた中小企業においても、2023年4月1日より月60時間超の時間外労働に対する賃金の割増率が25%から50%になりました。
    こうした複数の要因が重なり、物流コスト全体が膨れ上がっています。
  • 輸送効率の悪化
    近年、小口配送の割合が大きく増加しています。
    小口配送は一度に配送する数が少ないために積載率が低いにもかかわらず、配送先の数が多いので非常に非効率的です。小口配送では再配達も多い傾向にあります。
    その結果、輸送効率が非常に悪化しています。

このように、現在の物流業務にはさまざまな課題が挙げられます。

これらの課題を解決するには、効率化が欠かせません。効率化により限られた人数でのスムーズな業務遂行が実現し、長時間労働の抑制につながります。それによって人件費を抑えることも可能です。

大幅な効率化を実現できれば、ガソリン代高騰や小口配送の増加など、自社の企業努力だけでは対策に限界のある、外的要因によるコスト増大分のカバーにもつながります。

ただし、無理な効率化によりミスが増えるようなことは避けなければなりません。次章から、物流業務のなかでも特に正確性が求められる発送業務に絞って、適切な効率化の方法を考えていきます。

発送業務の正確性と効率化の両立

発送業務の効率化に成功しても、それによりミスが増えれば、余計な作業が発生するだけでなく、顧客の信頼を大きく損なってしまいます。

正確性を維持したまま発送業務を効率化するために、押さえておきたいポイントを紹介します。

発送業務に求められる正確性

発送業務では、ミスを起こさないように次のような正確性にも注意しなければなりません。

  • 発送物を間違えない
  • 送り先を間違えない
  • 個数を間違えない
  • 配達日や時間を守る

これらにミスがあれば、顧客に迷惑がかかり、信頼を失うことになりかねません。

そのうえ、そうしたミスをカバーするためには、さらに多くの時間とコストがかかってしまいます。逆に言えば、正確性の追求は効率化の推進に寄与すると言えます。

一方で、正確性を担保するために複数の目でのチェックや確認作業を行うと、そこに時間とコストがかかりがちです。また、効率化ではスピードを重視するため、短時間で作業を済まそうとすると、人的ミスのリスクが増大します。

では、効率化と正確性をどう両立させていけばいいのでしょうか。

発送業務において正確性と効率化を両立させる方法は?

一般的に、業務効率化のためには適切な人員配置や業務のマニュアル化などさまざまな手段がありますが、そのなかでも正確性を維持したまま効率化する方法としては、デジタル化(デジタライゼーション)が有効です。

発送業務におけるデジタル化を進めるには、送り状発行システムや倉庫管理システム、物流システム、ハンディーターミナル、RFID、RPAなどの導入が考えられます。

例えば、送り状作成において運送会社ごとに異なる対応をする必要があり、そこに多くの手間や時間を費やさざるを得ないといったケースがあります。

そのような場合には送り状発行システムを活用すると、基幹システムから送られてくるデータをもとに、各運送会社に対応した送り状の作成がスムーズにできるようになります。

人の手作業のみに頼るよりも、作業のスピードアップが図られるだけでなく、ミス発生のリスクを大きく抑えることが可能です。

送り状作成・発行における課題やデジタル化による改善は、「送り状の貼り間違いや出荷問い合わせで物流現場は混乱。「送り状を発行しない」しくみで解決」や「送り状発行から出荷実績報告までを自動化。問合せ対応工数の大幅削減を実現。」をご覧ください。

また、物流業務(発送業務)の課題や解決策としてのデジタル化については、「物流業界の課題―業界を取り巻く社会の変化と課題解決に向けたDXの実現」「RPAで物流業界を効率化!進化する物流テック」「物流現場を効率化するにはまず出荷業務から!デジタル化で課題を解決しよう」などが参考になりますので、あわせてご覧ください。

発送業務における効率化の事例4選

発送に関わる物流センターをメインに、効率化を行った事例を4つ紹介します。

サーモス株式会社

魔法瓶のパイオニア、サーモス社では、あらゆる部門・部署での業務効率化を積極的に検討してきました。そのなかでも、複数の運送会社ごとの対応が必要である煩雑な伝票の作成・発行業務の効率化を、優先して取り組むべき課題と位置付けました。

受注の際にデータ入力に多くの時間を費やすことに加え、手書きで送り状に個数・重量などの記載をしていたのです。さらに運送会社側のシステム変更に伴い、調整作業が発生することも少なくありませんでした。

そこで、運送EDI対応の送り状・荷札発行システム「送り状名人」を導入。それまで運送会社ごとに複雑な手作業が発生していた工程に、1人のオペレーターによるPC入力のみで対応することが可能となりました。

効率化へのほかの取り組みとの相乗効果により、事務所での送り状発行作業の工程を10工程から4工程へ、出荷現場での工程も5工程から4工程へと削減でき、大きな業務効率化につながっています。

参考:複数運送会社の送り状を一括管理 ペーパーレス&脱属人化を達成! サーモス製品の発送業務を送り状名人で改善

A社

製造販売メーカーにおいて、送り状の発行を効率化した事例です。

発送において複数の運送会社を利用していたため、運送会社ごとにシステムを使い分け、シールラベルや送り状を発行していました。そのため発行作業に膨大な手間と時間がかかっていました。

そこで送り状発行システムを導入。一部の運送会社については完全ペーパーレス化を実現し、残りの運送会社についても処理の時間が短縮され、送り状発行にかかる作業時間を1/4まで減らすことに成功しました。さらに、年間数件程度あったラベルの貼り間違いを起因とする誤出荷も、0件となりました。

B社

RFIDを導入して工場・倉庫・店舗での入荷時や出荷時の検品を効率化させた、アパレル企業における事例です。

B社では、商品の入荷・出荷時に手作業での検品が必要でしたが、その作業は店舗のPOSシステムとは連携していませんでした。

そこでRFIDタグを活用し、入荷時から出荷時までの一括管理を実現。検品作業の時間を2/3に、棚卸しの時間は1/4に短縮することに成功しました。

C社

製造会社においてAGV(無人搬送車)を導入し、作業を効率化した事例です。

C社では、従来はハンドリフトを利用し人力で物を移動させていたため、運べる荷物の量や重さに限界がありました。また、バランスを崩して荷崩れを起こし部品を破損したり、スタッフが腰を痛めたりといったことも大きな課題でした。

AGVの導入により、スタッフに代わりAGVが運搬。スタッフはピッキングした荷物を置くだけで済み、働きやすい職場になっています。レイアウトや業務フローの大きな変更はせずに、運搬作業において大きな効率化に成功しました。

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物流センターの課題解決事例集~発送の最適化と帳票処理の効率化

正確性を保ったまま発送業務を効率化するにはデジタル化が必須

物流業務のなかでも、発送業務は特に正確性と効率化の両立が求められます。その実現に有効なのが、デジタル化です。デジタル化すれば、正確さを維持したままスピーディーに荷物を送り出すことができます。

発送業務においては送り状の処理が重要になります。ここにミスが出れば、本来荷物を届けるべき人に荷物が届きません。さらに、そのミスの処理のために多くの手間と時間が発生するなど、極めて非効率です。

紹介した事例のように、発送にかかる業務をデジタル化・自動化すれば、発送大きな効率化につながります。

ユーザックシステムでは、受注から出荷まで一連の業務負担を軽減し、効率化につながる自動化ソリューションを提供しています。物流・発送業務のデジタル化・効率化には、「送り状名人」がお勧めです。詳細を下記よりご確認いただき、ぜひご検討ください。

送り状名人|運送EDI対応 送り状・ラベル発行システム

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物流部門のコスト最適化を進めるためにはなにが重要か ~発送業務のデジタル化による業務効率化~」